企 仙名総本会
作 仙名節太郎
監 鉄凪文庫
私、仙名節太郎は、どう見ても普通の人間だ。 この青星でよく観られる人々という存在の一員にしか見えない。 しかしながら、それをあくまでも見た目のみの話。 内面は誰も知らぬ。どのような思想を持ち。どのような未来を見ているのか。 誰も知らぬ。 「しかし、誰もその内面を見ようとしない。あまりにも重く暗く悲しく。見るに見かねない無残な目に見えぬ世界を。空虚こそが虚無を意味するのではないように。私の心も魂も存在しないように見えるが存在する。」 と彼の者は言った。それか人類の終わった。弐〇壱〇年の夏に残した言葉であった。 「人間はまだ過ちを繰り返した。だった一瞬でデジタルに切り替え、旧の者は全て要らない扱い、百年以上積み重ねた文化はいずれゴミ箱で見つかろう。」 彼の者はまた人類規則に反する言葉を出した。人類は面倒くさい存在だ。社会に反する言葉を放つ非専門的な人間を「不慣れ人」や「引籠り人」や「独り人」と呼ぶ。そしてその者達を問題があるように見て治療法を探している。 「私の役目は終わるのか、これから人は誰も気づかず新たな人類に書き換えられうるだろう。いわゆるソフトウェアアップデートという奴だ。。」 渋々いう彼の者が老人に見えるかもしれぬが、ただの小学生だ。今は年を老いこれを書いている支店ではもう強制的に大人になったが、まあどうでもいいわ。 そしてまた時が経った。 そして中学生になった。 さすが小学生の頃の話を続けると「学童保育員会」から訴えしかねないので今はできぬ。なので仕方なく中学校から始めよう。仙名という彼の者について。 彼の者は「仙名家」の一族であるが、今は存在しない「家」である。なぜならこんな旧時代の産物を残すと社会から疎まれるからである。そもそもお金持の「家」ではないので、敢えて公表する必要はなかったけど、まあそれはさておき。 彼の者は密かに一族として使命をまとわなければいけないと思った。その使命は 「ユメノ番人」もしくは「ユメの味方」もしくは「ユメの使者」として人類が夢を見続けるように手助けをする事であった。しかしながら、人類は変わった。もう神や自然からも、剰え先祖や人間からも必要以外の助言を得ようとしない。自ら悩み躓いた時のみ助言をえようする。 だから要らない者として彼の者は扱われた。 使命をまとうために問題が発覚するまえから助言した所為で嫌われた。 でもこれは仕方ない彼の者が悪いのだ。時代に適する事ができなかった彼が悪いのだ。 そして彼の者は後に「なんでもない部」を立ち上げた。 これが全ての問題の始まりであった。 ここからは物語の流れを抑えて、ゆっくり行こう。 そうしないと、誰も読まないから。 中学校一年の春の時であった。私は「殺虫剤」という小説を書き始めた頃であった。学校をどてもつまらなかった。授業は能動的ではない。まるで機械に情報を打ち込めるみたいで気持ちが悪かった。そんな自分をもっと怒らせ吐きそうにしたのが「カップル」という存在であった。自分が通っていた「御田原中学校」の壱年の中でほぼ全員が付き合っていた。これはいわゆる天国に見える地獄だ。授業中にもなりふり構わずイチャイチャしてトイレからは必ず男女が交わる囀りが聞こえた。昼飯の時はすべての教室が社交場になったようで自分はいつ食べる場所に困っていた。こんな学校辞めたい気持ちはなんどもあったが。やめれば懲役なので…それはさすがに我慢するしかなった。でもなにもしないまま我慢するのは難しかった。なので小説を書く事にした。それが「殺虫剤」。カップルを虫に例えこの学校から追い出すために。自分にとって初めての小説ながらも一番嫌だった小説だったので今は「原本」がない。まあ、それはどうでもいい。 私はいつものように、窓辺に座り、桜を眺めながら、社会を嘆きばがら、鉛筆を手に取った。心を一つにし、周りのイチャ音を遮断した。そして小さいノートに書き始めた。丁寧とは言えない乱雑な字で書き染めた。私は妄想の度に旅立った。この教室の人間は全員粉に吹き飛び、私が想像する理想の人物が煙と共に現れた。チャイムがなる途端に机から飴玉が噴出して床を埋め尽くした。そこで生徒会長が入った。彼女は白い特攻服を着て自分の身長(約109.7㎝)と同じ長さの木刀を背に乗せていた。そして叫んだ「この学校は私が占領した。ここから学校という概念を捨てる事を宣言しよう」。すると生徒は喜びながら「万歳」と何度も叫んだ。すると飴玉が空に飛び上がりポップコーンのように弾き、粉粉になって雨のように降り出した。そして日差しに照らすと、虹が降るように美しかった。 「我ながらいい出来だ」と物語の中で見つめていた私がそう言った。すると想像していなかった展開が起きた。 「お久~お日様のように元気いっぱいなタクだく!」 そう、見知らぬ女の子が話をかけたのである。しかし、なぜか会ったことがあるような気がした。胸がむずがゆくなり引っ搔きたくなるが、魂を搔くのは到底無理だ。なので私は反射的に自分の胸を握りしめた。しかし、胸の鼓動は収まることなく、パクパクとどんどん早くなった。私は息が荒くなり冷え汗が起き始めた。 「あれれ~顔色が悪いぞセタ」 女の子は私に顔を近づき、額をあてた。 「大丈夫?熱あるみたいけど」 あの女の子は知り合いなのか…なにも思い出せない。 「大丈夫」 私はなにも考えたくなくなった。 「嘘は禁物よ!ほら~早く保険室へ~行こう!」 彼女は私の手を握りしめた。これは恋人つなぎ?と思った瞬間、私はペラペラした紙が風に流されるように女の子に引きずられた。そして記憶はここで途切れた。 目が覚めるとベッドの上だった。ふかふかな感じがするし、先保険室と言ったのでベッドで間違いない。しかし、ちょっと傾いている気がした。視線を天井から窓側へ移すと先の女の子が手を抱えて寝ていた。女の子は結ってない長いピンク色の髪で青いリボンがついた白いワンピースを着ていて、すごく可愛かった。彼女の後ろに翼が生えている幻覚が見え始めた。見惚れているようにじっと見つめると、女の子は眠そうに起き上がった。 「お兄ちゃん、起きた?」 彼女は急に変なの事を言った、寝ぼけているのだろうか… 「え?お兄ちゃん?」 「ぷっ、ハハハハハ、冗談だよ!本当にセタの魂はいつも奇妙な感じがするんだから」 彼女は満面の笑みを見せた。かわいい~ 「忘れたか?もうこれで何回目なのか…私は君の幼馴染、タクだく」 変な語尾が戻った。なんだろう…あの「ク」は… 「すまん、なにもわからん」 こういう事態は一度もなかった。夢の中で知らない人が出てくる事は一度もなかった。物語は基本どんなキャラでも、名がないキャラだとしてもある程度主人公と接点がるが…私はあの女の子もなんの接点もない気がした。違和感。怖い。恐怖。不安。誰だろうあの女の子。私を別の人と間違っているのだろうか… 「じゃ本当に私を忘れたか問題を出すね!一つ目の問題!私の誕生日は?」 「2月7日!」 なぜか即答した。 「正解!じゃ、二つ目の問題!なな部に入ってくれる?」 このくだり何処かで…何処かで…あ… 忘れていた。彼女は私が書いたヒロイン。しかし、落選したのでそのまま物語が進まず止まった本。 でもこの本、今の私が書いていない、これは未来の私だ。 いったいなにが起きているのだ。ここに登場するべきキャラはタクではない。可笑しい。可笑しい。私は誰? そして目が覚めた。 作品から脱出した。 未来の私が書いた本のヒロインに出会う妙な夢。 夢なのか現実なのか区別もできない。 なぜ、私は今でも冷え汗をかいているのだろう。 私は執筆中の本を閉じお手洗いに行った。まだ、動悸が収まらない。落ち着こう。 無意識に鏡で映る自分を見た。なぜか少し大人ぽい感じがした。顔を触ってみるととても冷たかった。そして背筋が凍るような気がした。ゆっくり後ろを見ると… すると後ろに、誰かが現れた。驚き全身を振り返ってみると… 「ぶー返事なしか、もう知らん」 これは夢の続き?完全に拗ねたタクが現れた。なにこれ、まだ抜けてないのか?想像してみよう。私の手にはリンゴがある。何回瞬きをすると手の平にリンゴが形を整えた。そうか、これは夢の続きか、なぜだろう…冷え汗が止まった。動悸が正常に。 「あ、あ、あ、ごめん、私なにも知らなくて・・・」 慌てて、どうしようかと頭を回している内に、本能的に謝り出した。そして、安堵の息を吐き夢を見続けることにした。 「ははは、やっぱりこれぞセタだよ」 あれ?先の拗ねは嘘だったのか、どうも嘘には見えなかったが… 「こっち来るんだく」 タクは急に私の腕を掴み、全力で走り出した。周りが真っ白くなるほどの速さ。尋常ではない。私は一体どこに連れて行かれるんだ。 「はははははは、楽しい~」 全身に鳥肌が立つほど、急に浮かれた。やはり夢は楽しいものだ。なんでも出来て、なんでも叶えるようになる。そう…今のように。え? タクは学校の壁をぶち壊し、街を南へ走り行き… 「どこまで行くのか」 まあ、夢の中だから、ある程度の急展開は許されるはず…はず? 瞬き一瞬。 『京ノ都、京ノ都、出口は右、いや左か、開いている所に降りてください』 「京都、京都にやっと来た!いや、原作が高校一年の春で止まったから修学旅行がパーになっちゃったの、責任取ってね、幼い原作者!」 え、展開早い。ちょっと待って、ここは京都駅の新幹線ホーム。え~先まで新幹線の線路を走ったわけ!あぶねえ事するな。まあ、夢だし。 それに、幼い原作者?あれ…バレた? 「困惑している顔だく。タクは第二代のなな部の一員だく、多分今のセタが高校になったら書くはずだく、なんで私がこの夢に繋がってしまったのか、全くわからないんだく」 「へえ~それで当選したの?そして日本一有名なラノベ作家になれたの~は~未来が待ち遠しい~」 やっぱり、浮かれている私だった。未来にドキドキワクワクが詰まっていた。 「それは…あ、ユキ?あ~ユキだ!ユキちゃん!」 話をそらし、彼女が見つめた反対の上屋に一人の少女がいた。 その少女は私が知らない制服を着て、顏は天狐面を被っていて見えなかった。 とにかく、その少女は一気に上屋から飛び降りて、私たちの前に現れた。 「久しぶり、私の出番少なすぎて登場したの、構わんよねタク」 彼女は仮面を耳元にそらしながら言った。 「まあ、原作では高校3年頃に仮面を脱ぐはずだったのに、あっけなく終わっちったよね~は~」 「なんか、キャラ変わってないユキ?」 「まあ、原作が止まってもキャラ達はー」 「それは言っちゃダメ」 タクはユキの口を封じ、耳元になにか囁いた。すると… 「あ、ははは、ごめんセタ、久しぶりでなんかテンションぶっとんじゃった、へへへ、じゃね、良い旅を~」 と言いながら出発寸前の新幹線に乗り、博多へ向かった。 「あれ?」 話が見えない。まあ、いいか。楽しければ万事オーケーだ。 「では、なな部合宿会、始まるよ」 「修学旅行じゃないか!」 「どっちでも良い、案内人が待っているから、早よ行こうか~」