今週更新はここから!
- 爆発しても恋愛しつづけ!
- 作品を書く瞬間から創作権は生まれます、故にこの作品の盗用は禁じます、犯罪です。
- 個人で書いている故に誤字又は脱字があります、ご理解お願いします
恋・愛・研・究・部
普通な恋愛は拒む
異例な恋愛は
恋愛は自由であるべし
これを掲げて活動する私は。
一体なにが起こったのか…
その過程を辿り着こう…
プロログ
爽やかな風が吹く朝、囀る小鳥達は可愛い私をそっと起こしてくれた。
- 「いい朝だね、小鳥ちゃん」
欠伸をしながら屋根上から立ち上がり空へと手を伸ばした。
- 「おはよう空さん、今日も可愛い私を見守ってね」
そして地面に飛び降り…
- 「土さん、今日も柔かい私の足が怪我しないようによろしくね」
玄関から入って母に挨拶した。
- 「お母さま、いい朝ですわ」
すると…
「寝惚けないで早く食べなさい!」とフライパンで焼いていたパンを上に投げて、野球のバットのように打った。
- 「いただきます!」
思い切りジャンプして食パンを食いつき、そのまま玄関へ向け走り、服を脱ぎ、転んで制服を着って、鞄を背負い、ドアを思い切り開いて、母に挨拶した。
- 「うううううううう(行ってきます)」
これはただ普通な日常である。いつもと変わらない日であるが、今日はこの日常をく崩すつもりである。
あ、その前に自己紹介。忘れる所であってえへへへ
私は雪波(ゆきなみ)春ン(はるん)である、ハルンという名が結構難しく感じるかも知れないが、個性溢れる名前で大好きである。ちなみに名前の由来は、春という名前が多いから、誰も使わない名前を作りたくて『ン』を付けたらしい。
ともかく、名前の話はここまでにして、私は多分世界一可愛い女子高校生である。
好きな物は真珠で、嫌いな物はない。それと…
自己紹介でこんなに難しい物だったのか、何を言えばいいのかよく分からないな、えへへ
あ、先の話を続けると、日常を崩すと言う意味は…
- 「これから好きな彼に告る」の!
凄く緊張し振られるか心配もあるが、それでも今の私が綴って来た日常を捧げたい程に彼を愛しているから、愛して愛すぎるから、どんな事が起きても彼を彼氏にして見せるつもりである!
あ、そういえば彼の紹介をしなかったね。彼は私の幼馴染。
あ、丁度いいタイミングに彼が玄関から出ているね!
- 「朝の陽ざしはやはりこの身を熱るな、ふ、いたずらな太陽さんだね」
そういう彼は、私- の愛する彼、名前は
- 「あ、この日差しは太陽ではなく雪波だったのか、気付かなかった私に罰を!」
- 「いや自分を殴らないで、一生懸命に働く細胞がかわいそうでしょう」
私は彼が殴って自分の頭をなでなでした。
- 「あ、この温もり、やはり君は私の…カイロかしら」
- 「なんだよ、それ!期待しちゃったじゃん」
- 「そう、期待したのか、ではもっとしてあげる」
彼は私のリボンをそっと掴み…
- 「姫さま、只今参上しました」
キスをした。
- 「リボンではなく、手でしてくれたらいいのに」
と私はぶつぶつ言った。
- 「じゃ参りましょうか、私達の…お城に!」
やはり、彼も私が好きなのは間違いではない!
いま、顔が赤くなって、手で頬を擽り、話を逸らした。
- 「そうね、王子よ、白馬に私を乗せて、この世界を一周しよう」
- 「望むならば」
家で飼っている、白馬を口笛で呼び、馬が来ると、踏み台を用意して私を先に乗せて、次に彼が乗って。
- 「いざ、参る!」
自転車ではなく、馬で登校する。いつもの事である。
桜の木々の間を走り出す、桜の香りが鼻の中で花を咲かす。
いい春だ。
今日が高校入学から二日。
学校に着いた後、馬から降りて、下駄箱で靴を替えて、教室に向かう。
- 「月に無地到着する事を歓迎する、私のこの月の主、月主(つきぬし)君だ、地球人よ覚悟は出来ているわよね!」
変な挨拶をする彼は、初日から話をかけられ仲良しになった。自分は地球人のお母さんと、月人のお父さんの間で生まれた混血らしいが、どこまでが事実なのかは把握できない。
まあ、現在二十三世紀には月や火星に人が住んでいるけど…よくわかんない。
- 「覚悟は出発の時からしていたから、問題なし、今日も地球は奇麗だね」
彼は月主君に返事をした。
- 「そうね、小さくても勇気溢れる、血気王政な球体、とても奇麗だ!」
- 「ね、鐘が鳴る前に早く行こう!」
私は彼の裾を引っ張った。これ以上話を続けたら月から始め宇宙の果てまで主題が飛びそうなのでその前に区切った方がいいと思ったからである。
彼も解ってくれたのか、話を終わりに向けた。
- 「ごめん、基地に戻ろないといけないとうだ。ここは酸素が薄くて息しづらいから」
- 「わかった早く基地へ戻ろ!」
1年B組
これが私達の教室である。
静かで、いや静かすぎて不気味なくらいの教室である。ほぼ明るい人は私と彼と月主だけある。だからかな、主に先生から仕事を任される。嫌ではないが、なにか妙に可笑しいな気分がする。まるでこの世が私達のために動いているような感じ。まあ、単に授業を受けるのを好まないからかもしれないが。そんな変な考えを繰り返す内に長かった授業がようやく終わり放課後になった。
すると…
- 「そろそろ、帰還の時が来た!さらば!」
普通はすぐ帰らないで、色々いたずらをする月主だが、今日はなんかそれよりも楽しい事があるように、子供のようにウキウキする顔で素早く下校した。いったいなにがあったのか本当に気になるけど、それはまた別のタイムで話そう。
- 「一緒に帰るか」
彼がそう話をかけるのは始めただ。なぜかぎこちない声であったが、恋に落ちていた私にとってはそれが希少な品を見つけたように嬉しかった。
- 「あ、分かった、じゃ駅前にできた新しいデザートの店に行くか」
喜びすぎたか緊張する私であった。この緊張感をどうにかしたくて口が早くなった。
- 「いや、それよりも大事な事があるから」 なになに大事な事って!彼は私に告るつもりなのか!
- 「この晴天の日が憎い!雨が降ったら、相合傘ができたのに」
ガタン。私は拍子が抜けちゃった。彼はこんなかわいい私を見てもなにも感じないのか!せめて顔でも赤くなれ!なんだあの仏頂面は!格好いいけど…
- 「天ノ様を悪く言っちゃ、メーだよ!晴天でも日傘があるじゃん、相合傘しよう」
私は自分の折畳式の日傘を鞄から持ち出した。
- 「そうか!その手があったか!天ノ様、申し訳ありません、この無礼をお許しください」
相合傘には動揺しないのに、なんで神様には動揺するのよ!まあ、神様だからだけど…
せめてどぎまぎしてくれ!
- 「じゃ、デザートの店に行こう」
- 「そうだね」
その台詞の後に、話が途切れた。なんだよ、もう~!なんか言えよ!恥ずかしいから!
でも、彼は一切喋らなかった。
丘を越え、野原を過ぎ、海が見え始めた。自然の恵みというのは本当に美しい。
お姫様と王子様の後ろに城の背景が似合うように、蒼い青春を送る私たちにはこの大自然が似合うのだ。
本当に、不思議。先まで彼に対した怒りが静まり返って、木々を横切り、風に髪をなびかせる、私の、私だけの王子様に見え戻った。
- 「やはりこの道は君と歩くと一番美しく見えるんだね」
見惚れていた私は、感情がこぼれ出した。
- 「そうか、そうよね。私も一緒」
彼の素直な返事に私の頬が赤くそまった。
- 「嬉しい」
このまま手を握り、この道が永遠に続いてほしいが。それは叶わない。
万物には限りがあるもの、この恋も早く実らないといつかはあっけなく終わるかも…
そう不安になった私だった。すると彼が持ち手を握りしめた。私の手とわずか1cmの距離。
青空の下で赤くなった私たちは店に着くまでなにも言わなかったが、先とは違くお互いの気持ちは繋がっていた。
一「恋の実り、それは収穫の喜び」
海辺の喫茶。人も車も通らない道路に面していて、海を眺められる所。
一階には砂浜に面した海の家がある、人がないのが淋しくて残念だが、海の波音が聞こえてゆっくりできるのはとても良い。
まあ、でも私はなぜか近くに聞こえる波の音より、遠くで聞こえるか否かの波の音が好きである。だった、大きな波の音はどこか怖い。自分を呑み込めそうで。
- 「ただいまー」
ここは彼の親が経営している。とても優しい方々である。
- 「お邪魔します」
なぜか成り行きで店にも関わらずそう言ってしまった。
- 「お帰り」
厨房の奥から、彼の母の音が聞こえた。忙しい見たいた。
- 「いらっしゃい」
一階の海の家から彼の父が上がってきた。
- 「いつものセットで」
彼は相変わらず同じことを言いながら席に座った。私はこういう一つにこだわる彼が好きである。この喫茶だけではない。八百屋さんを通ると必ずネギを買うし、精肉店さんでは通るとコロッケを買うし、駄菓子屋さんを通ると必ずラムネを買う。決して選ぶのが面倒だからではない。ただ好きになったものには簡単に飽きないという事である。そこが好き。
- 「私はなににし・よ・う・か~な」
鼻歌を歌いながら座ってメニューを見た。
- 「あれ、季節限定メニュー~」
恥ずかしいながら、限定メニューを見ると居ても立っても居られないのだ!
- 「イチゴゴロゴロって!変な名前~」
苺がゴロゴロするほど多いということかな~あ~なにが出るのだろう!
- 「後は、アインシュペナで」
- 「本当にアインシュペナ好きだな」
- 「でも、あまり味わからない~ただお父さんが好きな珈琲なので」
- 「やっぱり父が好きなのね雪波は」
- 「へへへ」
かすかに聞こえる波の音、珈琲豆を茹でる音、厨房で料理をする音。
どれもこれも好きな音。この音に囲まれた私は、幸せだ。
そろそろ夕日が沈み始めた。今日はやたら時間が早い。まるで魔法にかかったみたいだ。なので嫌いではない、むしろ好きだ。
- 「お待たせ~特製ナポリタンとカプチーノと」彼の母はテーブルに食べ物を置き、
- 「イチゴゴロゴロとアインシュペナです~ごゆっくり」彼の父も同じく笑みを見せながら置いた。
- 「では、大人は一階に降りるから二人でイチャイチャしなさい」
彼の母が笑った。
- 「わかった。邪魔しないで。盗み聞きもダメ。」
- あれ~普通だったら、照れながら「そういう関係じゃない」と否定するのに。
- 今日、来るの告白?
- 「ごめんね、うちの親はいたずら好きで、もしかすると罠があるかもしれないが、いや、私が必ず罠から守って見せる!」
- いや、そうには見えない。なんか今日やたら可愛いな。女々しくないか。
- 「そう、ありがとう」
- 私は照れる顔をコップで隠しながら言った。なによもう、なんか私だけ照れるみたいじゃん。許さん。私は、普段と違って落ち着いている彼に対して、いたずらしたくなった。
- 「でも、王子様~あなたの白馬が見当たりませんが、どうやって私をこの罠だらけ屋敷から救い出すおつもりなんですか」
- 普段は自然と出るセリフが、今日に限って思い出すことができなくて、無理に作ってみた。ってか私いつもこんな恥ずかしい事を彼に行ったの、嫌だ~もう…恥ずかしい!
- 「ぷーーー」
- 彼は飲んでいたいたカプチーノを噴き出した。あ、終わった。恥ずかしさで爆発しそう。我慢!
- 「あ、もうだらしないんだから~」
- 私は平然と見られるために、ポケットからハンカチを取り出し、彼の口元を拭いた。
- 「あ…」
- 彼は急に顔が真っ赤になった。まるで今まで我慢したように、一気に登り始め、風邪の時のように顔が熱くなった。
- 「姫様、白馬は自分が口笛を吹けば走ってくるのでご心配なさらず…」
- 恥ずかしさ故が彼の日本語がカチカチになった。こんなに嚙み合わないのは始めてた。
- 「そうですか、今呼んでくれませんか」
- 一体私はなにを言っているのだ。多分沈黙よりなんか喋った方が緊張を和らげると思ったが、やけに恥ずかしくなった。
- 「あ…はい・・・ふぃ~」
- 口笛下手すぎる~可愛い~
- 「にやにやするな、恥ずかしいから…」
- 「私も恥ずかしいよ、あ…」
- お互いの感情が通じ合えたような気がして嬉しかった。
- そして、予想した通り沈黙に落ちた。お互い珈琲をすすりながら、目線を合わせないようにした。しかし、意外と感情は繋がっている気がして、恥ずかしいながらも、どこか落ち着く感じがした。本当に時速が遅くなるような気がしたが、いやではなかった。きょろきょろ彼の顔をゆっくり眺められるからよかった。彼の純粋な笑顔、赤くなった頬っぺた、風邪になびく髪、ちらりとこっちを見る目、瞼、眉毛…やっぱり私は彼が好き。あ~この感情どう伝えれべいいのか、わからん。
- 「そういえば、私たち駅前の店に行くっていいながら、無意識にここへ着っちまったな」
- 「当たり前よ、ここは私と雪波、二人きりの、特別な場所だから」
- 私は、珈琲を飲み切ってしまい、思いついた事を口にしたが…まさか彼が…あの日を覚えているとは…彼の目は先と違って何か決心していたようだ。ついにか…この時が来たのか…
- 「入学式の後だったよね、道に彷徨った雪波に出会ったの」
- そう、先彼と二人きりに歩いてた道。あの道の真ん中に出会った。
- 「その時から、君に…いや、君に言った言葉を覚えているか」
- 言葉、そう、覚えている。いきなりだったがまだこの胸は覚えている。記憶にはない幻の台詞。覚えているのは何かを言っている彼の唇と、その後の炎。
- 「あの、言葉を出した瞬間、雪波は炎に包まれてしまったの。それからずっと思ったの、私がなにか言っちゃいけない事を言ったか、私たちの間を邪魔する運命という壁があるのか、ずっと考えたの。そして見つけた。」
- 見つけた?なにを?
- 「この村に伝わる御伽噺(おとぎ話)を、その話は、恋の病で体が燃えて死んだある女の子と、それを嘆き神への救いを求めたある男の子、しかし救いはなかった。自分の責任だと思った彼は自分の家を燃やし、死ぬつもりであった。すると空から雨が降り出し、彼の服を濡らした。そして彼は気づいたの、あ、もう彼女は雨になったのか、自分の服を抱きしめ、涙を流し、その雨はやがて海へと繋ぐ道となり、それが「雨恋道(あまこいみち)」、先私たちが歩いた「海(あま)ノ道(みち)」の旧名だよ」
- そうだ、この話、おばあちゃんから聞いた覚えがある、なんで私は忘れていたのか…
- 「だから、雪波に私の気持ちを伝えたいんだけど…」
- 『あかん、恋愛はあかんだ、娘よ!それがこの家の定めじゃ』
- 急に目眩が始まった、そしておばあちゃんの声がかすかに聞こえる、彼の言葉と重ねて…
- 「雪波がなんかい忘れても、なんかい炎につつまれても、この家が燃えるんだとしても」
- 『あかん、恋愛は悪い病気じゃ、かかったら治せぬ、だからやっちゃダメだ!』
- 「この偽りなき気持ちは必ず雪波に届けてみせる、なにがあっても、なんねんかかっても」
- 『男の子はみな、恋愛しか頭にない獣じゃ!目も合わせっちゃいかぬ!病にかかるのじゃ!』
- 「雪波、あなたの事が、好きです、真っ蒼な海に、山に、空に誓います、だからどうかこの恋が成就…」
- 体が溶けるような、熱さ、目元が赤い、そうか、あの時も彼は言ったんだ。同じ台詞で、同じく右手には自分の胸を掴み、左手には私の手を掴み、噓偽りない清明な目で私の目をじっと見つめながら…でもごめんね、忘れてしまうのよ、それに…この気持ちはやはり私が言うべきだと思う、だって私が先に…ごめんね、ごめんね、こんな私で、でも…
- 「私も好きよ、この胸に刻むよ、君の言葉は何回も刻むよ、もし忘れても、計り知れない広い海が山が空が覚えてくれるはずだから」
- 『ありがとう』と声に出したかったが、口元しか動かなかった。届いたのか。わからん。神のみぞ知る。あ、遠くに、透き通る海が見える。雪に覆われた浜辺。ざざーん~ざざーん~。普通とは違う波音。優しい波音。私を眠りに誘う。
- あ、朝日、月光…みんな私を迎えてくれてる。
- 淋しいけど、こんなに照らしてくれてありがとう。
- もう、だめだ、瞼が重い…ごめんね、先に寝るね。
- 暗い。怖い。助けて。
ここから→
- 目を開けてもいいのか、なにが見えるか怖い。体が覚える嫌な記憶。鮮明ではないが、焼き野原。
- 「お姫様、目覚めの時間です」
- 優しい声が私の耳元から聞こえた。この声、すごく安心する。不安をやわらげ、魂を包むこの優しさ。そう、彼の声だ。彼は誰だ。彼?
- 私は、急に顔が思い浮かばなかった。この胸は覚えているのに、頭には連想できない。頭が複雑になり、ぼやける彼の顔を思い出すために、目をゆっくりと開けた。
- 「ようやく目覚ましたか、我が姫様」
- 目は覚めたが、彼の後ろのまぶしい太陽のせいで、顔の輪郭しか見えない。一体だれだっけ。
- 「そろそろ、昼にしますか、特製サンドを用意しました」
- あ、顔から涙が溢れそうけど、溢れない。悲しみが表に出ない。なぜ。なぜ。なぜ。
- 「ありがとう、でも今は休みたいの、長い悲しい夢を見たから、エルレン」
- 黄色、緑色、紫色の花で埋め尽くされている野原。奇麗。自分が先まで何を考えていたのか、この花達の香に醸し消された。(注・「醸し消さす」意味は匂や香、雰囲気などが別の匂や香、雰囲気などによって消される事)
- 「そうですか、とても大変な思いをしたようですね、紅茶でも飲みますか」
- 「遠慮するわ、このままにして」
- 彼の膝の上に頭をもたげいる私は起き上がりたくなかった。この温もりもっと長く感じたい、このまま永遠を生きたい。もっと彼の温もりがほしい。私の体を温めるくらいの温もりを。
- 「そうですか、姫様、あれを見てください」
- 彼が指さした所には小鳥が花の上で眠っていた。花の蜜を食べている内に眠くなったのか、
- 座ったまま寝ってしまったようだ。自分が食事をしているのを忘れたままに。
- 「かわいい小鳥ね、まるで私たちみたいに…」
- なにを言おうとしたけ、崩れ落ちる思いで。もう悲しまない。新しく始めよう。
- 「姫様にとっては私は花なんですか」
- 「そうね、コスモスみたい」
- 「コスモス、満天の星空、そうですか、この身一つでも、この心には無限の感情という星が咲いています。この星星(ほしぼし)たちは姫様の心に流れ星として落ち、また新たな星を生むでしょう、そう、無限に。
- この真っ暗な空に迷っても、このエルレンがあなたを必ず導きだしましょう」
- 「では、私は君の満天空を心配せずに飛び回るは、君も知らない君の星に出会ったり、君の一番星に抱かれたり、自由に飛(と)び旅(たび)をするは、永遠の旅を君と、この星が果てるまで」
(注・「飛び旅」の意味は、飛行機などにのり空を自由に旅をする事)
- 「そうですか、いいですね、そろそろ出発しましょうか、姫様」
- 「そうね、新たな旅を始めよう」
- 私が起き上がると、彼は立ち上がり手を差し伸べた。
- 私はその手を握り、立ち上がった。無限のように広がる花畑を眺めながら、
- 一本道を歩き出した。慣れているこの道、懐かしくも切ない道、天ノ道。
「恋の行方、収穫の後祭り」
夜。静かな闇が、この町を覆う。
彼がいない夜。ぬくもりがない夜。この胸は冷える。
聞こえるのは、海の波の音と、車の足の音。似ているようで似ていない。正直に車の音が海の音を真似しているようで気味悪い。でも仕方ない。それが人間が選択した道だから。夜でも生活したいという人間の願望が作り出した雑音。周囲の動物も起こす、嫌な雑音。
今日は寝付けない。彼がいない所には安心して寝れない。
頭が痛い。
夜は嫌だ。
寝る行為が嫌だ。怖い。
そもそも人間が作り出した、あの街灯がどうも嫌いだ。
月の明かりを邪魔し、自分が月であるように、自信気に道路を照らす。あの車と同類だ。
今日も彼がいない。
傍に居ない。
いつもの事だ。
祖母が亡くなった後、この崖の上にひっそり隠れているこの屋敷。どても人を淋しくする。この屋敷はかつて大家族が住んでいたそうだ。人々のために、世のために、貢献した家であったそうだ。しかし、時代が減って、『誰かのために』よりも『自分のために』が強くなり、この家は自然と一緒に消滅したらしい。いや、消滅しかけているのが正しいが。まるでこの家の重みを背負ったように、私には病がある。正体不明の病。解っているのは、炎と、記憶の欠片、そして彼の体臭、この三つが幾度もなく、蘇っ繰る。自分は、今を生きているのか、それとも過去の繰り返し線に生きているのか。混乱する頭。乱れ落ちる心。特に夜に。頭が休む途端、心からもくもく、不安が上がって来る。喉は煙突になったように、窮屈になる。吐きそう。トイレ。
私は夢を見ているのか。夜中、廊下をぶらぶら歩く。長い。今日は月がよく見える良かった。春なのに寒い。海がすご其処だからなのか。そして、異変に気付く。
廊下の板が、少し上がっていた。中庭に誰かが忍び込んだのか。
しくしく泣く音。でも幽霊ではない。幽霊の泣き方と人間は違う。
恨みがあるかないかの違い。まあ、いい。
私は、目を閉じ、自然離れしている匂いを探った。
あ、あった。書院だな。
泣き止み始めたか、これは、異変だ。なにかをやらかす前兆だ。
走り行くと、轟音が海から鳴り響く。
『津波?まさか』
そして、町の明かりは消え、車は止まった。だとしても暗闇ではない。
月光が射す。奇麗だ。周りをほなかに包む。まるで古いアルバムの写真を見るようで、
心が思ひ出に沁みる。そして、書院が見え始めた。
枯山水庭園に面している書院は、窓や襖はない。本棚はあるが、ほぼ千年以前の本だらけ。歴史的な価値はあるかも知れないが、今まで盗まれた記録はなかった。代々から、「本を盗む泥棒は、来客なので、親切に持て成せ」と言われたからかな。
「何者じゃ、名を名乗れ」
私は何も恐れてない。こんなぼろい家、泥棒の侵入はしょっちゅうある事。
『しくしく』
聞こえるのは小泣(こな)く音。
音を立てないが、胸の奥から伝わる悲しみ。これは決して演技ではない。
「其方、どうして泣いておるのか」
泣いていた彼女は、私を見上げた。
「あなたは天使ですか」
「なぜなのじゃ」
「翼が見えます、真っ白い羽、月に照らされ、とても美しい…」
「其方がそう信じたいなら、それで良い、再び訊くかなぜ泣くのじゃ」
「涙の止め方が分かりかねません」
「涙は、流水の如く。水源を知らぬとどうにもならないのじゃ」
私はゆっくりと近づいた。床下は浅い水に覆われ、庭園へささらぎの如くこぼれ、砂に沿ってぐるぐる廻っていた。
私は服が濡れるのを構わず、裸足で中に入った。
「その服をみると、同じ高校だな、私は、雪波だよ」
これで話しやすくなるかも?
「え?あの姫様なんですか?」
あの姫様?
「学校八つ福物語に登場する、なんでもない事も聞いてくれる姫様ですよね」
あれ?
「よかった、実は、ここがその噂の城だと言われ来たんですが…」
どんな話をしても涙は止まらないんだ。これはなに。
「そう呼ばれているのか、それで悩みはなんだ」
「聞いてくれるのですか、ありがとうございます、では」
長い話が始まった。切なく、悲しく、言葉では現れ切れそうもなかった。これは、魂の響きそのものであった。彼女の物語をどう語ればいいだろう。いつもに増して難しい。なので、ここで一旦幕を下ろそう。そして、私がこの話を、彼に伝えった時から話そう。その方が遥かに語りやすくなりそうだ。本当に人生は予測がつかない。思わぬ出会いと別れ。たまに、圧倒されてしまう人の感情。これは単なら、日記か、伝記だが。それでもこの本とあった人にはまた別の物語があるはず。それを全部尊敬する。物語には無数の可能性と希望が混ざっているのだ。それが暗い物語だとしても。それを全部聞き、まとめたいと思ったのは小学校からであった。その気持ちは今も変わらない。学校でも何回も人の物語を聞く。それが広まって、涙が止まらない彼女と出会ったのだ。この大切な物語、丁寧に語ろうじゃないか。
「雨が降る、恵みをうけ、ぐんぐん伸びる」
彼女はその日以来、会った事がない。私は携帯が無かったけど、せめて学校を徘徊すれば出会えると思ったが、全然会えなかった。すこしづつ心配が膨らみ、私は彼に話す事に決めた。
学校の帰り道であった。
「雨が降りそうだな、今日は寄り道は厳しいそうだけど、どうしましょうかお姫様」
相変わらずの彼、芝居、なのか、と思うくらいの名演技。白馬があったら完璧だが…
「いいじゃないか、寄り道、途中で雨宿りすればよいし」
「あ、でも姫様の服が濡れ、その肌が冷たくなり、風邪でも引かれると思うと…」
「大丈夫じゃ、その時は、分かっておるの」
「そうですか、かしこまりました、では今日はどこに」
「久しぶりに、雲の森で散歩しようか、話したい事もあるし」
「そうですか、良からぬ者や険しい野獣があったら、自分が全力でお守りいたします」
私たちは、道がない、野原へと歩いた。目の前に見える森に向かって。
ここはかつて参道だったらしい。明治以来衰退の一途を辿ったらしい。
かつてここが道だと現すように、地蔵菩薩様が、社で目を紡いでいらっしゃった。私たちは、目を合わせるためにしゃがみ、祈りをあげた。
これから、神の森に入るのに対しての許し、安全祈願。そして、今日一日の幸せを。
私たちは、お互い、すっきりした気分で、悩みをとばしたように、道を進んだ。
杉の木々が会釈をし、私たちを出迎えた。季節外れの菜の花も、目一杯の笑みで向かえてくれた。風が強く吹きはじめ、私たちを乗せ、森へといざなった。とても幸せな気分だ。森と一体化されたように、笑いながら、鼻歌を歌いながら、森に入った。
雨が降りそうで、曇っているが、この森が暗くて怖いと感じるよりは、どこか、ほっとする安心感があった。まるで太古の森のようじゃ。
ようやく、地面に足が着き、一本の道が見えた。石でできた参道である。
だれも管理をしていないが、自然と妥協し、苔に包まれていたが、砕いてはない。
とても美しい道。
私たちは一方一方踏み出した。
私たちが歩くのを見たのか、鹿の群れが、道を開けてくれた。不思議だ。
私たちはゆっくり歩き始めた。
「水永(みずなが) 吹葉(すいは)、知ってるか」
私は落ち着き、丁寧に言い始めた。
「水永だったら、あの井戸掘りの水永家?」
「そうか、そういえばそうだったな、ともかく知ってる」
「知ってるも何も、巷じゃ有名な家でしょう、まあ、吹葉さんは知らないが」
「そう、ここの(学校の)制服だったけど、全然見つからなくて」
「確か、三年生では、水永 穂葉(ほむは)先輩は知ってるけど」
「だれ?」
「知らないの、生徒会長だよ」
「名前が覚えにくくて、忘れた」
ほむは先輩。ここの学校で、美人として人気が多い。確かに、あの冷たい顔つきと、相反する優しい笑みは、不気味というよりは、不思議な感じがした。学生たちの間では、「稲穂の神様」と崇拝されている。一体、稲穂と(名前以外に)なんの関係があるのか、私もよくわからないが。一説によれば、文学部長、川辺 秋昏(あきぐれ)先輩が、正月に飾った稲穂を見てこう言ったらしい。
「凍りゆく、冬の稲葉、春待たず」
すでに心は温かいので、冬を恐れず凍ってゆく意味らしい。
これを聞いてもピンと来なかった。心は温けど、責任を負うため表情が凍ったと隣の彼は解釈するが、よく解らん。ともかく、稲穂の神様、穂葉先輩は、いつも学生側で、学も重んじながらも、休むことも大切にした。(お菓子)食べ放題ボックスを設置したり、昼ごはん時間を一時間延ばし仮眠タイムにしたり、色々。私にとってはこれを許可してくれた校長先生がもっと凄く見えるが。まあ、彼女の口述が凄いのは否定できぬが。入学式。あの演説。これが人を引き込まれせる感じなんだと初めて経験した。本当にすごい。
「もう、姫様、忘れてはいけませんよ、外交にかかわりますから」
やさしい、私が訊きたがらない言葉はいつも、面白い理由をつけて納得させる。
「そうね、他国との関係は大事だもんね」
口噛んだ、恥ずかしい。
「ともかく、吹葉は彼女の妹ってことかしら」
「その可能性はあるね、でもなんで急に興味を持ち始めたの」
「実は、彼女うちへ来たの」
「いつ?」
「夜中に」
「夜中!大丈夫だった、怪我はしてない」
「大丈夫、戦ったわけじゃないから」
彼が心配する理由は、前、泥棒が入って戦った時に、大怪我を負った事を覚えているからだ。
「だから、私んちへ来るって言ったのに」
「無理、家を継ぐものとして、それはできかねません」
「人が住んでなかったら、あれは家とは呼べない」
そう、彼の一存だが、支え合える人、つまり、二人以上住まない家は、家ではないと思うのだ。そう言うと、一人暮らしは家がない事になるけど、その辺はどうなるのだろう。
「そう、まあいいよ、ともかく、家で色んな話をしたの」
「へ~お聞き願えますか、お姫様」
「よろしい、それはある春の事でした、彼女は運命を感じたのです!」
「運命、それは」
「恋の芽生え、実りへの長い道」
私たちはなぜか、演劇風にしゃべり、笑い続けた。
静かな森へ、新たな命が芽生えそうな、勢いで腹を掴んで笑った。
思い切り、何が面白いのか、まったくわからない。でも笑いは高鳴り、お互い、笑う事で、頭が冴えた。
「いや、久しぶりにわらった」
彼は、笑いを堪えながら言った。
「いや、なぜだろう。森に入ると、大声をだしたり、大笑いをしたり」
生命力が溢れるからか、周りに人がいないからか、森に入るといつもこんな感じだ。
「鳥居が見え始めた、もうすぐね」
私が苔の鳥居と呼ぶ、鳥居が現れた。本当に、苔でいっぱい。元の石があまり見えない。不思議な鳥居。
「では」
「失礼します」
挨拶のつもりでお互い鳥居を入る前に、お辞儀をした。
この鳥居をくぐると、雰囲気が一変した。
杉の森から、松の森へ。無論、外では杉に隠れて見えないが。
不思議にこの中は、松に生い茂っていた。まるで年寄り、いや成人の集まりのように、長い年月で垂れ下がった枝で、手を振ってくれた。私たちも会釈しながら前へ進んだ。
すると優しい爺さんの笑みが樹皮に見えはじめた。不思議な森。
ここの木々は、生きたいという願望が強く、大地の力を思い切り、吸い込んでいた。そのためか、元々敷きってあった、石道は、完全に石に戻され、自由に旅をしていた。歩きづらいと思うかもしれないが、全然、そういうことはない。むしろ、ここにいるだけ、力をもらったように足が軽くなるのだ。
「あ、井戸発見」
私は木々に隠れている井戸を見つけた。というより、元々知ってる井戸だ。多分何千年前に掘って今に至るらしい。確か、有名な僧侶さんだったけど、もう覚えていない。でも、おかげ様でお水に困る事はない。私も何回はここで汲んでいる。家に、水道は通っているが、ここが何倍もおいしい。
「手伝うよ」
彼は、蓋を押し、桶を掬い上げた。お水をために、これほどの時間がかかるのが丁度いいのだ。いつでも飲める今の時代。お水の大切さ、それを忘れている人が多い。このような面倒な事を繰り返したら、自然と気づくのに。
「いただきます」
私は両手で掬ってゆっくりと喉を潤した。あ、この冷たさ。とても気持ちが良い。まるで自分の内面を洗い流すように、体の中が一気に冷えるような感じがした。
「いただきます」
彼も両手で掬って飲み始めた。格好いい。彼は喉が渇いたのが、片手でがぶがぶ飲んでいた。礼儀はないけど。でも、なんか男前みたいで、胸が痛んだ。これが俗に言うせくしーなのか。意味は解らんが。
「ありがとうございました」
蓋を閉じ、私たちは井戸に向かって合掌した。いつもの事だ。こんな恵みをいただけたのは本当にありがたい。
そして、また、道を歩く。長い、長い道。
神社が見えるまで、ずっと歩いた。空を飛ぶ鳥を見たり、雲の動きを見たり、小動物を見たり、ゆっくり流れる時間、存分に堪能した。普段は経験できない貴重な体験。だから、私は森が好きだ。ここが好きだ。
「時間に囚われないのはいいよね」
私は、そっと聞き出した。少しづつ変わる空模様を見ながら。
「時間には何の罪もないよ。時間が人間に捕らわれているだけ、つまり利用されているだけ」
「うん?」
「時間は、ありがたい存在なのよ、根を伸ばさ、葉を生やせ、実を実らせる、それには時間が不可欠だ」
「それはそうね、時間は流れるだけど、人間がそれを可視化したのね。まるで神をその目で拝もうとするように、そうか、囚われすぎたのは私か」
そしてすくすく笑った。自分の愚かさに気づき、恥ずかしくて笑う。
「空を見よう、あの自由な空を、透き通る空、時間の流れする忘れさせる、ぼーっとさせるあの空を見よう、そして」
「笑おう、一生懸命笑おう、この地球を揺らがすほど、腹を掴んで笑おう」
「あの、遥か彼方まで笑い飛ばそう、果てない海原を超え、限りない自由の空を飛び立とう」
「あ、そう。旅をしよう、旅をしようじゃないか、この未知なる未来に、足を踏み入れた、私たちには」
「この旅こそ、唯一許された自由、さあ、その手を、一緒に行こうじゃないか」
「この旅が終わるまで、お供いたします。野原を走り、洞窟を潜り抜け、森に囲まれた湖を探しましょう」
「きっと、そこには、我らの夢を、自由を乗せる、飛行機があるはずだ
「それに乗って行きましょう、終着のない旅路を」
「おう、行こう、私が君を乗せ、雲の群れと共に、あの宇宙、あの星々、あの月まで導こう」
「喜んで、付いていきます、どこなりとも、どんな苦境があろとも」
『二人一緒なら大丈夫』
私が恥ずかしがるのを感づいた彼は、私が好きな台詞を演じてくれた。この台詞は私の父が書いた未完作の『それでもあの丘には風が吹く(仮)』の冒頭で登場するシーンである。父はこの作品は傑作だと私が六歳の時に自慢した。しかし、それは父の考えだけだった。みんな、こんな時代遅れの本を誰が読むかと文句を言った。確かに、女が男に尽くすみたいな話は時代遅れ化もしれないが、私にとってはそれよりも、文体の美しさや文脈の躍動感が凄まじく、それ以来も大切に保管して、読んでいる。未完作故に、本当の意味で、この本の主人公達は永遠の旅に出ている。私はそれがとても羨ましかった。いつか、私も自由な旅をしたいなと思うが、なかなか叶えそうにない。
「ありがとう」
「いつかは、飛行機に乗せてあげる、君が望むなら、遠くへと」
「言葉はありがたいけど、今はダメ、わかるでしょう、お王子さま」
「でも…」
「大丈夫さ、王子様が言わなくても、私を思ふ心は十分伝わっていますから、何回も自分が記憶を失っているのも分かっておりますよ、でもこの胸はお王子様の思ひやりに埋め尽くされてますよ、だから笑いましょう。今できる事はそれだけですから」
「あ、姫様、必ずしや、姫を自由にさせてみせます、それまで、いやいつまでも共に笑いましょう」
「あ、笑おう…」
なぜか、笑いではなく、涙が流れた。熱い涙が。これは、心の涙。私は抑えずに彼を抱きしめた。もっと近づきたくてもできかねない。
「姫様」
「ごめん、ちょっとだけでいいから、このままに」
「でも…」
「大丈夫、これくらい、我慢できるから、消えないから」
空が紅く染めるころ、私の心も恋に染められた。いや、既に染められているかも知れない。いつも剝がされるので、塗り直すだけかも…
「ありがとう」